製図のルールで迷うこと02 中心線を挟んだ寸法

製図のルールで迷うこと

中心線を挟んだ寸法については、上司とも議論になるし、加工者とも意見が合わないことがあります。正しいルールを確認し、揉めやすいポイントを上げ、チェックしやすくわかりやすい図面にするにはどうしたらいいかの考えを述べますので、参考にしてみてください!

中心線って何?

まず、定義を確認します。

細い一点鎖線

一般的な用途

 G1:図形の中心を表す線(中心線)

 G2:対称を表す線

 G3:移動した軌跡を表す線

JIS Z 8316:1999 表1より抜粋

中心線とは中心を表す線ですね。

ポイントは一点鎖線中心を表す線であり、対称を表す線であるということです。厳密には中心線=対称を表すでは無いのですね。

ここで問題なのは、中心線を表す一点鎖線は対称も意味してしまうというところです。ここに混乱の発端があります。

「中心線は対称を意味する」は設計者の好物

設計者は「対称」であることが結構好きです。シンメトリーが美しいように、実際にシンプルであったり、綺麗な対称性のある図面や製品は、機能面や材料コストなども優れている場合が多いです。私の場合、半分だけCADで作って、あとは一点鎖線で反転コピーして図面を書いたりしています。

「中心線は対称の意味がある」ということを常識だと思っている設計者が、特に何も考えずに寸法をうたって図面を完成させると、加工側にとって?な図面が完成するのです。

加工者「中心線って具体的にどこ?」

設計者的には一点鎖線だから対称に加工して!というかもしれませんが、一点鎖線が表す中心線や対称には実態がありません実態がない場所は測定ができません。実作業において測定不能なのですが、JISにこのような一点鎖線の定義があり、かつ設計者が好んでよく使うため、どこ基準で加工すればいいの?問題がよく起こります

実際にyahoo知恵袋を覗いてみると、中心線の基準に関する質問がたくさん見受けられます。多くの質問の裏には、中心ってどこだよ!という設計者への恨み辛みが垣間見えます。みなさんストレス抱えているんですね・・・。

時代の流れ

たぶん昔はあまり気にしていなかった

ここからは予想ですが、昔はあまり寸法について、うるさくなかったのだと思います

以前は、図面を書く人と加工する人が近くにおり、ちょとした変更などは口頭ですませ、図面にメモすれば製品として使える部品ができました。手書きの図面をわずかに変更するのが非常に手間だったというのも原因の一つと考えられますし、設計者が加工者と同じなんてこともあったと思います。加工中心が多少ずれていても、問題ないか、手修正で済ませていたのかもしれません。

しかし、現代の製造業では求められる精度が格段に上がっています。少しでも寸法が違っていれば即クレームとなり、「今日までに作り直してもってこい!」という方もいます。

ただ実際にそんなに精度が必要ない場合でも「作り直してもってこい!」になっている場合も増えている気がします。

近年のものづくり業界がちょっとのミスに対して過剰反応になってきているのではないでしょうか?

CAD CAMの発達

もう一つの要因として考えているのはCAD CAMの発達により、加工が基準点からの数値制御になってきたことだと思います。

「一点鎖線は対象の意味がある」ということは皆知っているのですが、実態として基準を取れませんので、結局端からの寸法を追って加工をします。

ちょっと違いますが、P.C.Dを指定した穴のピッチの座標を現場から聞かれることもあります。昔は現場の方が三平方の定理を駆使して座標を計算し、治具を作って穴を開けていたそうです。「現場のレベルが下がっているなー」とベテラン設計者はいますが、現場の方に計算をさせているという時点で設計者としてダメなのでは?とツッコめませんでした

今の時代の加工に合わせた寸法表記というのが求められているのだと思います。

3Dの世界では中心線不要

私はゴリゴリ3DCADを使用している訳ではありませんが、3DCADに一点鎖線を用いた中心線の記入に必要性を感じません。丁寧な人はモデルに一点鎖線を入れる事もあるのでしょうが、そのモデルを利用して加工のプログラムを作ったり、3Dスキャナで取り込んだデータと比較したりする場合は一点鎖線の役割ありませんよね?

元々立体的なものを平面に落としこみ、加工指示をするための加工者への手紙として作ったルールが色々な製図のルールですよね。ですから、立体(3D)として表現できるのであれば、それらのルールは全く不要となり、新しいルールが必要となってくるのでしょうね

中心線とはどう向き合っていくべきか?

ルールは守りつつ、重複寸法やカッコ寸法を多用すべき

一点鎖線は対称を示す、とJISで決まっています。ですが、上記のように今の現場に合っていないことは確らかです。

機械設計者としてはルールを守るのが第一だと思います。でも、現状には合わないので、JISでも認められているカッコ寸法や重複寸法を駆使してできるだけ補足してあげると良いと思います。

寸法の補足が無いために、加工者や検図をする人からイチイチ呼ばれて議論している時間が無駄です。これは設計者が気にすればなくなる議論ですので、設計者の方で注意して寸法を追加してあげるべきだと思います。

あえて中心線を使って表現しない

対称性が明らかなものもいくつかあります。

  • ピッチ円直径上に割り振りされている穴
  • 円筒軸の中心線
  • 歯車などの特殊だが形状が限定されているもの

それら以外のものにはできるだけ対称を示す一点鎖線を使わないようにします。かならず、基準はどこかを明確にして、そこから寸法を拾うようにするということです。まあ、当たり前なんですが・・・。

加工者は設計者へフィードバックして欲しい(面倒でもお願いします)

加工者の方は、少しでも解釈に迷うような図面があったらフィードバックをして欲しいと思っています。

確かに、面倒臭い、時間がない、頑固な設計者の相手をしたくない、などの理由があると思います。最近は特に逆ギレするクレーマーのような方が多いですようね・・・

忙しさのあまり、矛盾があると分かっていてもそれで加工してしまって後々トラブルになり、その時になって、これはこう解釈できるのでこういう加工しましたと説明して、設計者が悔しがっている、なんて事もあると思います。それをみてざまぁみろとか・・・

思って欲しく無いです。・゜・(ノД`)・゜・。

設計者の一番の成長の栄養になるのはフィードバックです。近年、現場との繋がりがますますなくなっていく方向です。特に若い(仕事歴の浅い)設計者に対しては、是非フィードバックをお願いします。

同じ会社の加工現場と設計という関係であればやりやすいと思います。フィードバックした時に文句を言われたり、うやむやにされたりしたら、設計部門の上司へ相談をお願いします。それでもフィードバックを聞き入れてもらえないようであれば、自分が偉くなって変えていただきたいです。そのような意識の職場は、変えないと会社潰れます。もし、会社が好きなら自分が偉くなるしかありません。でも変える気がなければ退職の検討もやむなしです。

加工現場と設計が別会社の関係であってもフィードバックしてあげられるところはしていただきたい、というのが個人的な願いです。フィードバックして、あまりにもひどい対応であれば付き合い方を考えてもいいと思います。その時に、できれば会社単位でなく、個人単位で見ていただけると助かります。会社単位でも個々人で取り組み方が全く異なりますので。

まとめ

一点鎖線は中心と対称の意味があり、混乱の原因となっている!

対称の意味ではあんまり使うことはオススメしません!

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