幾何公差06 直角度 傾斜度 (Φのつけ方と検証方法も解説)

幾何公差

直角度は幾何公差の中でも多様する機会が多い幾何公差です。必ずどこかしらへ基準(データム )を設けて表す必要がありますので、データム の置き方をこちらの記事で抑えておいていただきたいです。また、直角度や傾斜度にΦがつく場合とつかない場合で意味が変わってきます。検証方法についての考えも述べてみました。

直角度とは

直角度はある基準(データム )に対して指示箇所が直角になっていてほしい範囲を指示するものです。その範囲にΦが付く場合は、書かれた数字の直径の円筒の中に指示箇所が収まっている必要があります。また、Φが付かない場合は、書かれた数字の距離だけ離れた2平面の中に指示箇所が収まっている必要があります。

傾斜度とは

傾斜度はある基準(データム )からどれくらい傾いた範囲の中に指示した線や面があるか、を指示するものです色々な分類方法がありますが、傾斜度は直角度を少し発展させたような考え方ですので、ここに分類しました。直角度との違いは、ある基準(データム )からの角度を「理論的に正確な寸法」によって指定するところで、使用方法などは直角度と同じと見て良いでしょう。以後、直角度の話を中心にしますが、傾斜度も同じと考えてください。

直角度にΦをつける意味の確認

直角度がややこしいのが、直角度にΦをつけて表すか、不要かの問題です。対象物が線だった場合にΦをつける「可能性」が出てきます

データム指示箇所Φ表記
不要
必要だが、場合によっては不要
不要
必要だが、他の幾何公差での補足が必要
 

データム 、指示箇所が共に面の場合

データム 、指示箇所が共に面の場合は直角度にΦは不要です。指示箇所が面のときは2平面の中にあれば良い、ということでいいですもんね。

データム が面、指示箇所が線の場合

この場合、データムである面に対して指示した線が直角であることを規制したいはずですが、データムである 面に対して直角な2平面では線の直角を表すことはできません2平面では、データムの面に対していくらでも角度をつけることができますよね。つまりΦをつけて指示した線を円筒の中に入れるようにしないといけません。

ただ、指示した線にまた別のデータムから幾何公差が指示されていて、それにより線の直角を規制することができている場合は、Φをつける必要はありません。

まとめると、基本Φはつけるが、別の幾何公差が指定されていた場合は不要になる場合があるという感じです。

データムが線、指示箇所が面の場合

この場合はΦは不要です。ある線に対して直角な面は無限にありますが、指示箇所が決まれば、許容可能な範囲は決まってしまいます。

ここが平行度と異なる点です平行度の場合、データムが線、指示箇所が面で、指示箇所が決まっても、他の幾何公差で補足する必要があります。

これはある線に対して直角な面(直角度)が軸方向の移動のみの1自由度に対して、ある線に対して平行な面(平行度)は軸方向の移動と軸を中心とした回転の2自由度になっているからです。

データム、指示箇所共に線の場合

この場合はΦが必要になります。かつ、他の幾何公差で補足説明をしてあげないといけません。これは、データム と指示箇所が共に線の場合は、上記で説明した自由度が軸方向と軸中心の回転の2つになっているからですね。

検証方法

直角が出ている定規、スコヤなどを当てる

最も原始的な方法です。直角が担保されている見本(スコヤなど)を測定対象にあててその差を確認します。基本的に目視ですが、場合によってはスキマゲージなどを入れてどれくらいの直角度かを測定できます。しかし、正式な記録としては弱いところです。

現場で簡易的に確認したいときに使用しましょう。

直角度測定器を使用

ダイヤルゲージを用いた直角度の測定は想像以上に難しいです。直角度測定器と呼ばれる専門の測定器を用意しなければ、非常に苦戦することが予想できます。

「定盤などのある平面に対して曲がらず垂直にダイヤルゲージを移動させる」という行為はよく考えれば大変難しいものだと容易に想像がつきます。例えば0.01の直角度を測定したければ「曲がらず垂直に」の度合いは0.001オーダーになってしまいます。

購入するとすれば、校正記録などを含め、10万円以上はするでしょう。

直角度測定器の変わりとして、マシニングセンタを間借りして使用するという手もあります。この場合、マシニングセンタは測定器ではないので測定記録としては参考値になってしまいます。しかもそのマシニングセンタの稼働時間を奪うので、あまりいい方法ではありません。

三次元測定器

上記2つの方法において、データムがの時は、不足ながらもある程度は有効です。しかし、データム がになると非常に難しい状況となります。

データムが線になっている場合は、三次元測定機が一番です

Vブロックや定盤など、昔からある通常のやり方があまり使えないのに、三次元測定器だけで測れるというのは、三次元測定器メーカーと幾何公差を決めた規格団体の癒着を疑ってしまいます…いや、全然関係ありませんね。それだけ三次元測定機が優れているということです。

三次元測定機を使用するときの注意点としては、指示箇所が面の場合は測定ポイントを絞っておかないといけません。理由はこの記事にかきました。

数値を決める基準

直角度はデータム面を加工する機械にセットして加工することがほとんどだと思いますので、加工する機械の性能を加味して決めた方が良いと思います。

加工機のマニュアルにどれくらいの精度が保証できるかが載っていますので参考にしてください。

この記事でも述べましたが、設計として欲しい精度を書くのはやめたほうがいいと思います。欲しい精度からではなく、加工できる精度でモノを設計しましょう。

理想を目指すのはいいことですが、現実で設計しないといつまでもモノができません。

まとめ

直角度は、Φがついていれば円筒、なければ2平面間に入れてってこと!

自由度を意識して指示します!

検証は三次元測定機が良いが、それ以外はお金をかけないと

目安程度にしかなりません!

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