Oリングは内圧、外圧、両方かかるところに使えるのか検討してみた

モレを止めるモノたち
サトー
サトー

あれ?Oリング溝の寸法確認したら、内圧用と外圧用があるなぁ・・・。

ということで、色々調べてみました。

調べていくうちに下のように思ったんです。

サトー
サトー

平面用のOリングって、内圧外圧両方かかるところに使えないのかなぁ?

メーカーさんやJIS規格で確認してもよくわからんなぁ。。。

これが記事を書くに至った理由です。

私は普段Oリングを取り扱っていますが、技術的に専門家ではありません。
ですので、専門家の意見としてではなく、イチ設計者の意見として議論のネタにでもしていただければと思います。

確認:Oリングの使用方法について

Oリングの使い方は大きく2通りあります。

円筒面をシールする場合と平面をシールする場合です。

円筒面用はOリングの内外径をシール面として効かせるように溝が設計されています。

シールしている部品同士が止まっている場合も動く場合も両方使用できます。

油圧機器のシリンダーでよく見られる形状ですね!

平面用はOリングの上下平面をシール面として効かせるように溝が設計されています。

シールしている部品同士が止まっている場合のみ使用できます。

部品の合わせ目でよく見られる形状ですね!

ちなみにシールしている部品が止まっているところに使用する場合は固定用いているところに使用する場合は運動用のOリングと呼ばれています。

円筒面はOK!

まずはシリンダー等の円筒面に使用するOリングについて考えてみます。

円筒面用のOリングの例 右はOリング部の断面

このようなモデルを考えて、圧力の方向を考えてみます。

上の絵は左が高圧、右が低圧ですが、これが仮に入れ替わっても状況は同じです。

円筒面用のOリングの場合は左右どちらから圧力がかかってもOリングは軸方向に追従して動くので問題なくシールできます。

ですので円筒面に使用するのであれば両方向から圧力がかかってもオッケーです。

平面はありよりのなし!

平面に使用するOリングのモデルは下です。

平面用のOリングの例 右はOリング部の断面

色々下手ですみませんが、フタはボルトか何かで止まっていることにしてください・・・。

圧力は左(内)側からかかっているので、みぞ形状は内圧用です。

この状態で左(内)側から圧力がかかる場合と右(外)側から圧力がかかる場合を比べてみます。

まず、上の絵において、圧力は左(内)側が高圧となっています。

ですので、Oリングは内側から外側へ押され、溝の外周側にOリングが張り付いて、部品同士無事にシールされます。

では、この状態で圧力が入れ替わった時を考えてみます。

内圧用の溝で外圧をかけた場合 右はOリング部の断面

外圧がかかるとOリングは溝の内側に寄せられますが、内圧用Oリング溝の内周は、Oリングの内周より小さい為、Oリングがたわんでしまいます。

Oリングメーカーさんの資料には「内圧用は外径に、外圧用は内径に沿わせる。」とかかれています。

理由はこういうことなのでしょうね。

平面での使用の時は一方通行にした方がよさそうです。

私の考え:使えないこともないが、高圧や繰り返しは危険

しかし、平面用のOリングでたわみが発生したからと言って、絶対使ってはダメか?というとそうでもないと私は考えています。

もともとOリングは、セットした時点でつぶれて復元力が発生していますから密閉状態にはできているわけで、逆の圧力に対して全く耐えられないわけではないと思います。

ごくごくたまに起きるわずかな内外圧の変化であれば漏れることはないでしょう。

しかし、以下の条件では平面用Oリングの使用は控えた方がよさそうです。

絶対に漏れが許容できない場所

内外圧が入れ替わると、Oリングは繰り返したわみます。

通常の使われ方よりもOリングへのダメージが大きいため、Oリングの破損の危険も当然高くなります

危険物等、絶対漏れが許容できない場合はこの設計はやめた方が良いでしょう。

内外圧の差圧が高い場合

内外圧の差圧が大きいと、内外圧が入れ替わった時のたわみが大きくなります

ですのでOリング破損の危険も高まります。

内外圧の高低差が頻繁に入れ替わる場合

内外圧の差圧が少なくても、内外圧が頻繁に入れ替わるとOリングへのダメージは蓄積されます。

通常の使用方法よりも寿命が短くなることが予想できますので、この使用方法は避けた方が良いでしょう。

対策案

ここからは自分の思うOリングにあまり詳しくない設計者の軽い対策です。参考程度に・・・

定期的なメンテナンスにより適切な交換周期を掴む

Oリングの寿命は内外圧の逆転によるたわんだ回数や、内外圧の差によるたわむ力に依存します。これは使用される環境によって大きく左右されるので、一概にメンテナンス時期を決めることは難しいです。

定期的にメンテナンスをして現物確認し、交換周期を見定めた方が良いでしょう。

ただ、設計として「お客さんのところで定期メンテナンスをしてください」では少し説得力が弱いです。

どれくらいの差圧でどれくらいの回数なら破損なし、のような目安を実験を通して確認しておいた方が良いでしょう。

円筒用Oリングに変更する

前述の通り、円筒形用のOリング溝であれば圧力の向きは大丈夫です。

平面用を円筒用のOリング設計に変更するのは結構大変!

ですが、Oリングへのたわみも発生しないので、内外圧用のOリング設計としては、最も適していると言えます。

ただ、高圧、低圧が入れ替わる場合、Oリングには移動が発生します。つまり、事実上運動用Oリングとして選定すべき箇所となります。

できるだけPサイズを使用できるといいかもしれません。G以下の細いサイズを使用する時は注意が必要でしょう。

特殊なOリング溝の検討

あまり推奨されていませんが、三角溝などは両方の圧力をカバーできる形状です。ですが、充填率等の設計的諸元の問題があります。

また、充填率や反発力を使用される条件下ですべて計算しつくしたオリジナルの溝を設計すれば、内外圧に耐えられるOリング溝を設計することは可能かもしれません。

素人では無理だと思いますので、無難に円筒用PサイズOリングを使用する設計に変更した方が無難かも・・・

まとめ

内外圧かかる場所に使用できるOリングは円筒用Pサイズ!

その他は注意すれば使えないこともないけど「ありよりのなし」!

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