様々な流体を移送するのに必要になるのがフランジです。フランジは規格で形や材質が決められています。
この規格について、ポイントがいくつかあるのですが、非常にわかりにくいと感じています。
前回は概要と簡単な使い方について解説しました。
今回は題名の通りハマりやすく、マニアックな部分を解説していきます。

規格だから、書いてある通りになっていればいいんじゃない?
そんな落とし穴なんてあるの???

信じる者は足元をすくわれますよ!
サトーがハマった規格の落とし穴について解説します!
- ある程度フランジは理解していて、もう一歩進んだ理解をしたい人。
- フランジ規格にハメられたことのある方。
- いないと思いますが、フランジが大好きな方!
設計者が規格で確認すること 色々並べます
先ほども述べましたが、規格には落とし穴がたくさんあります。
私が昔ハマったやつを紹介していきますね!
適合材質に注意!結構あいまいです
材料は同等以上が使える? ⇨ かなり注意しないと使えません!
JIS B 2220 中の表には、いくつかの使用可能な材料があげられています。
しかし、本文を見ると「機械的性質と耐食性が同等以上の材料とする」と書かれています。
あ、それなら機械的性質が一緒くらいだから使っちゃえ!となると危険です。
同等以上とは、引張強さが基準になりますが、伸びや硬さ、温度特性なんかも重要です。物は言いよう。表記されたもの以外は選ばない方が無難です。
おそらく、海外規格材料を使えるようにするための文言ですので、なんでもいいわけではないと考えられます。
SS400とS20C、S25Cの扱いに注意!条件あります。
SS400とS〇〇Cについてはこちらの記事で解説しています。
上の記事でも述べていますが、SS400は成分の規定がありません。しかし、JIS B 2220のSS400の使用条件には炭素含有量が0.35%以上という縛りがあります。成分の規定がない材料に成分の下限を求めています。表「材料」の注記で書いてあるんです。
同様に、S20Cは引張強さが400 $N/mm^2$以上、S25Cは引張り強さが 440 $N/mm^2$以上と注記に書いてあります。引張強さの規定のない材料に引張強さの下限を求めているのです。
じゃあ、それぞれのミルシートをとればいいかというと、そうでもありません。
たとえば、SS400のミルシートをとったとしても、規格に成分の規定はありませんから、ほとんどのミルシートには炭素含有量は記載されていません。
同様にS20CやS25Cのミルシートにも通常引張強さは書いてありません。
たぶんフランジ専用のSS400やS20C, S25Cがあります。なんでもつかえるわけじゃないんです。
寸法許容値は結構ガバ

CADデータでフランジの絵をかいて寸法ギリギリに設計しないといけない場合は要注意です。
なぜなら寸法許容値がガバだからです。
例えばフランジ厚さ。JIS 10K 15A のSS400製 SOPフランジの厚みは12 mm です。しかし、規格の最後の方に載っているフランジの寸法許容差を確認すると 0 ~ +1.5 mm となっています。
ですから、12 mmより絶対厚いものが納品されるはずです。
そもそも12 mm に対しての公差にしては大きいですよね?通常SS400製SOPフランジは切削で作られるのでこの公差は余裕のハズ。
各メーカーさんに寸法許容を聞くと、「JIS規格通りです!」としか返ってきません。
ですので、各メーカーさんごとにフランジの大きさがミリ単位で違うことはザラですのでご注意を!
気になる場合は現物測定が一番です。。。ロットによっても違うときあるので万能ではありませんが。
最高使用圧力は意外と持つ
前回の記事で、最高使用圧力と呼び圧力に違いがあると説明しましたが、結構違いますので注意が必要という話です。
例えば、JIS 10K 15A のSS400製 SOPフランジは呼び圧力10Kですので、 $10 kg/cm^2 = 1 MPa $くらいしか持たないと思われますが、実際に圧力ー温度基準を見てみると、120℃までなら$1.4 MPa $まで持ちます。

え、結構もつやん…

そうなんです!もったいない設計してるかも知れませんよ!
設計圧力が$2 MPa$だからといって安易に呼び圧力20Kにすると損ですよー!16Kで十分です。
注意点をざっくり述べます。
だいたいは呼び圧力よりも最高使用圧力は高い傾向にありますが、高温で変な材料を使うとたまーに下回ります。
また、フランジの種類によっても最高使用圧力が変わってきます。
閉止フランジ(BL型)は最高使用圧力が他のフランジの種類より低く規定される傾向がありますね。区分Ⅰ、Ⅱ、Ⅲのどれなのか、確認をしてください!
使えない組み合わせがあるので注意
前回の記事でいろいろなフランジの種類について紹介しましたが、使えない条件の組み合わせがあります。

えー!?書いてあるのに使えない!?

そーなんです…
呼び圧力と座の組み合わせに注意
まず、座の種類(全面座FFと平面座RF)によって規定されていないものがあります。規格中の表「フランジとガスケット座の組み合わせ」から一部をまとめなおました。
フランジの呼び圧力と種類 | FF | RF |
JIS 10K / SOP, SW他 | ○ | - |
JIS 10K / WN, IT | ○ | ○ |
JIS20K / SOH, SW他 | ー | ○ |
上記のように使えない組み合わせがあります。わかりにくい重要なポイントを一部紹介します。
- JIS10KのRFが使えるのはWNとITだけ。その他は使ってはいけない。
- JIS20K以上はFFが使用できない。
- JIS20K以上にはSOPが無い。

私の場合、このことに気づくまで結構時間がかかりました。。。
規格だけ眺めているとなかなか気づけません。機械設計者の皆様、教わらなかったことは常識だそうです。
SOHは呼び圧力が低い場合には使えない
規格中の表「フランジの呼び径及び圧力ー温度基準の適用」の「JIS10K / SOH」を見てください。「ー」になっている項目がありますよね?
そうなんです。JIS10KでSOHが使えるのは大きい呼び径の時だけなんです。
実は表「呼び圧力10Kフランジの寸法」のところに「呼び径250A 〜 1500A」と書いてはあるのですが、この表を見ると、あたかもJIS10K SOHの250A以下が存在するように見えます。要注意ですね・・・。
TRが使えるのは呼び圧力が低い時だけ・・・とは限らない
規格中の表「呼び圧力○○Kフランジの寸法」の中の「ねじの呼び」項目のところに「Rc ○/○」と記入されているものはねじ込み式である「TR」を使用できます。
「TR」は呼び圧力が20Kまでに設定があり、しかも呼び径150A以下で使われることが表からわかります。当然「ー」のところは使えません。
ただ、これがJIS B 2239 「鋳鉄製管フランジ」になると話が変わってきます。
規格中の表「呼び圧力10Kフランジの寸法」を確認すると 150A以下でも「-」になっている項目があります。材料ループの「ねずみ鋳鉄(FC200等)」は小さいサイズだと使えない場合があるんです。
材質が違うと規格が違う、規格が違うと使えるものが使えない!ということがあるので注意してください。
機械設計者の皆様、知らなかったことは常識だそうです。
まとめ
安全の為にもフランジ規格の見方を覚えて正しく選定しよう!
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