機器の設計温度の決め方

機械設計

機器の設計温度を決めるときに考慮しなければいけないことをまとめてみました。

まず、設計温度そのものの定義を確認しながら、考えるべき要素(材料強度、耐熱温度、クリアランス)について触れていきます。

設計温度をどう定義するか

設計温度は分野や適合規格によって定義が異なります。下記に例を示します。

3.5 設計温度

圧力容器を使用し得る最高及び最低の温度として,起動時,運転時,停止時,異常時,環境などを考慮して設定する温度.

JIS B 8265 : 2017

バルブを設計するとき,各部の肉厚又は機械的強度を決定するのに用いる温度.

JIS B 0100 : 2013

このように設計温度の定義は様々です。

ですので、それぞれの製品に適応される規格や法令を調べ、定義を確認することが重要です

個人の思い込みの偏りが激しい言葉なので、その定義を明確化しましょう。

いっそのこと、自分たちで定義してしまうのも良いと思います。

設計温度を決めるときに考慮すべき要素

材料の強度

設計温度を決めたい製品の材料について、鉄鋼材料の場合、一般的にマイナスの低温になると「低温脆性」による割れが懸念されます。

一方、40℃以上の高温になると、引張り強さや耐力などの低下が懸念されます。

この使用可能温度を決定するのに参考になる資料については、圧力容器のJISであるJISB8265:2013 表B.1 がすぐ浮かびます。

しかし、現在私が鉄鋼材料の使用可能温度の判断でもっとも頼るものは、厚生労働省の「平成15年4月30日 基発第0430004号 ボイラー構造規格及び圧力容器構造規格の全部改正について」の「Ⅱ 圧力容器構造規格(平成15年厚生労働省告示第196号。以下IIにおいて「新規格」という。)関係」の「3. (3)その他」にある別表です。

この表は各材料における許容引張強さが温度ごとに書かれています

書かれている数値は通常知られている引張応力より低いと思いますが、これらの値には安全率が含まれています。

設計温度を決めるのに参考にするのは、引張強さの数値が書かれていない温度(ハイフンが書いてあるところ)です。

圧力容器においては、この表の数値が書かれていない温度では該当材料を使用することはできません

私の場合はこれをもとに設計温度を検討しています。

別に圧力容器としては使わないし、参考になんねーよ!という解釈もできますが、圧力容器で使うことができないない温度であれば構造用として普通につかうことも避けた方が良いですよね

シビアに材料コストを検討しなければならないとか、別の事情が特になければ、この表により機器の設計温度を考えれば安全側の設計になりますし、なんせ、厚生労働省が出している表なので説得力もありますよ!

潤滑油やグリースの耐熱温度

温度が高くても材料強度は大丈夫だけど、潤滑油がなんか変だ!なんてことあります。

潤滑油の耐熱温度については、潤滑油メーカーさんの営業の方に問い合わせるか、ウェブサイトで確認ですね!

でも、後述しますが、耐熱温度がわからないことは結構多いです。

インターネットやカタログで載っていなかったら、ほぼ教えてもらえないと思って良いともいます。

そういったときは、メーカーの方に温度が高くなると潤滑油の状態がどのようになるかを確認して設計者として判断します。

パッキンやガスケットの耐熱温度

機械部品で耐熱性が比較的悪くなる傾向にあるのがパッキン、ガスケット類です。

これらの耐熱温度から設計温度を決めても良さそうです。

これも潤滑油の時と同じように耐熱温度を教えてくれないメーカーさんがあります。

耐熱温度は教えてくれない??

潤滑油やグリース、パッキン、ガスケットの耐熱温度がわからなかったら製造メーカーさんに聞けば良さそうですが、そうでもありません

大多数のものについては、カタログやウェブサイトに耐熱温度○○℃と載っているとおもいます。載っているものについてはそれを参照すれば良いのですが、耐熱温度が書かれていないものについて、メーカーさんへ問い合わせても大体教えてくれません

ウェブサイトに書いてあってもその温度は限界温度なので、もっと低い温度で使ってください、と言われたことあります。

どうやら、使い方や使う環境によってだいぶ変わるようで、〇〇度まで大丈夫です!とは言い切れないのだと思います。メーカーさんも保証問題があるのでしょうね。

よって、耐熱温度については、実際に製品に組み込んで実験してみるのが一番良い選択と言えます。

かなり大変な場合もありますが、設計温度という大事なパラメーターを決めるのですから、大変でも実証実験が一番です。

そういった実証実験のデータについてはメーカーさん自体が欲しがっている場合もあります。

熱膨張によるクリアランスの変化

例えば、オーステナイト系ステンレス(たとえばSUS304)製のパーツと炭素鋼(例えばS45C)のパーツを組み合わせた機械の温度が上昇したとき、2つの部品は温度上昇で膨張する量がちがいますので、組み合わせたところがスカスカになる(またはとてもキツくなってしまう)場合があります。

このように、組み込んだ部品同士のクリアランス(スキマ)の他にも、機器内の重要な部品同士の位置関係の熱膨張による変化については注意が必要です。

変化するのは温度だけ?

設計温度を決めるときに、注意するのは製品の事だけではありません。温度が上下すると、製品に触れている空気や水、付属機器なども性質が変化します。

特に水の性質がかわる0度や100度の時は注意が必要です

自分が設計していない機器を自分の設計した機器に組み込む場合も確認が必要ですよね。

メーカーさんへ問合せするときは、実際に使用する環境も伝えてあげてください。

  • 常温の屋内で使用します。空調はあります。
  • 屋内で使用しますが、空調はありません。
  • 屋外で使用しますが、直射日光は当たりません。
  • 海の近くで使用します。
  • 川の近くで使用します。

メーカーの方の経験値から自分たちが設計している上では気付きにくい点をカバーしてくれるとおもいます。

相手から情報を上手くゲットすることも機械計者の重要な仕事です!

まとめ

まず、設計温度とは何を指すのか明確にする!

要素については調べたり聞いたり、あるいは実証して

最後は設計者として決定する!

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