NPSHがわっかんねぇ!その2 NPSH-rを深堀 定義や影響する要素を解説

NPSH

ポンプ業界ではよく出てくるNPSHですが、分かりにくいですよね。

前回の記事ではNPSH-aについて、細かくしつこく解説しました。

今回はNPSH-rについて深堀していきます。

NPSH-rを深堀すると、ポンプが少しわかるようになり、ポンプとお友達になれますのでお付き合い下さい。

サトー
サトー

ポンプメーカーでの設計経験を活かして、少し踏み込んだ説明をしていきます!

この記事がおすすめな人
  • 前回の記事を読んで、NPSH-rはざっくり理解したけど、NPSH-rがよく分からない人
  • NPSH-rの定義をガッツリ理解したい人
  • メーカーがどのようにNPSH-rを決めているか気になる人

NPSH-rとは  ポンプの性能を示す数値です

NPSH-rは Net Positive Suction Head – required の略です。rはrequiredの略で、「必要」などと訳されます。JISでの訳は「必要有効吸込ヘッド」です。

NPSH-rはざっくりいうと「ポンプの総合的な吸込に関する性能」を表します。

ストローで例えます!

前回の記事で取り上げたストローの例で説明します。

NPSH-rはストローの総合的な吸込に関する性能を表します。

例えば、吸込性能を表すものの一つとして、ストローの中の空気を「くち」で吸い出すときの「くち」の強さがあります。赤ちゃんが吸う力と大人が吸う力はちがいます。

もちろん、「くち」の強さだけではありません。

ストローに小さい穴が空いていればそこから空気が入ってしまうので、当然吸い込む力は弱まります。

また、実際のところ、プラスチック製のストローは吸いすぎるとすぐ潰れて壊れてしまします。

そういった要因をすべて含めた吸込み性能をNPSH-rは表しています。

NPSH-rは達成できる吸込側の水頭(低い方が○)

ここでNPSHの意味を確認しておきます。NPSH = Net Positive Suction Head の頭文字で

  • Net = 実質的な(正味の)
  • Positive = 正(プラス)の
  • Suction Head = 吸込側の水頭

でしたね。

ここにrがつくと「必要な(必須な)」という意味が追加されます。JISの定義を確認しておきましょう。

必要有効吸込ヘッド, NPSHR

ポンプのある運転状態において、キャビテーションによる性能低下を避けるためにポンプとして必要な有効吸込みヘッドで、ポンプに固有な値。吸込比速度、トーマのキャビテーション係数又は実験から求める。

JIS B 0131 : 2017

・・・まぁ、説明がわかりませんね。

私なりの表現をしますと、NPSH-rは「ポンプが吸込圧力をどれくらいまで下げられるかを絶対水頭で表したもの」って感じです。

例えばNPSH-rが 3 m であれば吸込側の圧力を -0.07 MPaまで下げられるポンプの能力がある、と考えればよいです。

吸込側の圧力の数字に関して、NPSH-rは絶対水頭で表されるので、ゲージ圧力に変換しています。

絶対圧とゲージ圧

圧力には絶対圧ゲージ圧の二種類があります。それぞれの圧力は基準が違います。

ゲージ圧は大気圧を基準(ゼロ)とした圧力です。

ゲージ圧力は単位の後ろにgaugeのGをつけて MPaG と表現します

一方絶対圧は、空気すらも存在しない、まさに何もない状態の時の圧力を基準(ゼロ)とします。

絶対圧はゲージ圧と区別するためにabsoluteのAを圧力の単位につけて MPaA と表現します。

そして、単位の後につくGやAはほとんどの場合省略されています。NPSHのことを調べている皆様の場合は圧力の単位がGなのかAなのかは必ず確認するようにしてください。

  • 大気圧 : 1013 hPaA = 0.1013 MPaA = 0 MPaG
  • 台風 : 980 hPa = 980 hPaA = -33 hPaG
  • 先ほどのNPSH : 0.03MPaA ≒ -0.07 MPaG

※3つ目は単位換算の値を丸めていますので、≒としています。ご注意ください。

計算方法を解説しておきます。

まず水頭(m)を絶対圧(MPaA)に直します。水頭10 m は約0.1 MPaA です(実際は 0.098 MPaA です)。

水頭 10 m が約 0.1 MPaA ですので、そのまま比例関係で 3 m は約 0.03 MPaA となります。

次に、この 0.03 MPaA は絶対圧力を示しています。ゲージ圧表記では-0.07 MPaGとなります。

NPSH-rはNPSH-aより低くないといけません

NPSH-aはポンプを運転した時の吸込側の圧力のことでした。一方、NPSH-rはポンプが実現可能な吸込側の圧力のことでした。

配管の正味の吸込圧力より、ポンプの吸い込む力が強ければポンプは液体を吸い上げることができます。

よって

NPSH-A > NPSH-r

でなれば、ポンプは液体を吸い上げることができません。

この辺の話は他のウェブサイトさんで散々語られているので割愛します。

どうやって決めているの?

NPSH-rはメーカーに聞け!というのが鉄則ですが、どのように決めているかを理解することによって、どのようなポンプを使えばいいのかが見えてきます!

こんな実験します! NPSH3とも言う理由

ではNPSH-rは具体的にはどのように決めているのでしょうか?結論を申し上げますと、実験をするしかないです。

吸込比速度やトーマのキャビテーション係数を使って計算でも求められるようなことも書いてありますが、その二つも実験から求めます。ここでは省略します。

NPSH3のJISの定義の確認(ちょっと長い)

これはNPSH-rがNPSH3とも呼ばれている理由を見ていくと理解できます。JISの定義を確認します。

NPSH3

ポンプ1段目の全揚程が3%低下する時の必要有効吸込ヘッド。性能曲線図での標準的な基準として用いる。

JIS B 1031 : 2017

安定のわからなさです・・・。

まず、ポンプの1段目というのが何かわかりませんよね。ポンプでよく〇〇段と数えられているのは遠心ポンプの羽根車です。遠心ポンプの羽根車の数を「段」で呼び、吸込み側から近い方の羽根車から1段、2段と数えます。

通常、遠心ポンプに羽根車は1つしかないので、何段目かはあまり気にせずとも良いです。

全揚程はポンプの入口と出口の圧力の差(全圧と言います)をメートル(水頭)で表したものです。

上記を加味して言い換えると「ポンプの全圧が3%低下した時の吸込側の圧力のこと」です。これでもなんのこっちゃわかりません。

この定義では前提条件が書かれていません。「ポンプがある一定の流量を吐出し続けた状態で、吸込み圧力を下げて行った場合」と補足してあげてください。

JISの定義の文面から、この前提条件は自然と浮かび上がってくるのですが、相当ポンプに慣れている人でも難しいと思います。

まとめると、NPSH3とは「ポンプがある一定の流量を吐出し続けた状態で、吸込み圧力を下げて行った時に、ポンプの全圧が3%低下した時の吸込側の圧力(水頭で表す)」となります。

NPSH3はNPSH-rと同意と考えて構いません。これで少しは分かりやすくなったでしょうか・・・

実験方法:ポンプの入口と出口のバルブを調整しますが、無理くね?

さて、先ほど確認した定義を実験すればNPSH-rが分かりますね!早速実験してみましょう!

しかし、ポンプを運転したことがある方ならわかると思いますが、無理くね?と思うはずです。

ある一定の流量を吐出し続ける状態を保ちながら吸込み側の圧力を下げていくのは至難の業です。

ポンプの入り口側にバルブを設けて絞っていけば吸込み側の圧力は下がります。しかし、吸込み側圧力と吐出側圧力の差である全圧(全揚程)は増えますから、流量は下がります。これを調整するのに吐出側のバルブを解放します。そして、流量が一定になるまで調整する・・・。やっとのことで合わせた圧力や流量計の測定精度も気になるところです。

測定は意外と面倒で、精度もあまり良くないと思っていただいて良いと思います。

容積式ポンプはちょっと違うよ!

今まではNPSH-rの求め方について、NPSH3のことを交えながら説明してきました。

しかし、これらは遠心ポンプに関するものです。容積式ポンプだと少し気をつけないといけません。

容積式ポンプのNPSH-rは非常に低いため、送液の飽和蒸気圧より低い圧力になってキャビテーションが発生する前に、液体に溶けていた空気が現れてキャビテーションのような症状が出るのです。

つまり、キャビテーションが起きる前にキャビテーションもどきが起きてしまいます。

逆の見方をすれば、液体に溶けている空気を抜き取ることができるくらい負圧にできている、ということなので、NPSH-rはなかなかのもの、とも言えますね。

このことについてはANSI/HI 3.6 という規格に説明があります。ここでは割愛します。

ANSI/HI 3.6-2016 - Rotary Pump Tests
ANSIHI2016-Rotary Pump Tests-This standard recognizes various performance test levels designed to permit a reasonable selection of tests, tolerances, and accura

どうすればNPSH-rを低く出来るか? ▶隙間を狭くします。

NPSH-rを小さくしたい=吸い上げ性能の良いポンプを作るにはどうしたら良いのでしょうか?

これはポンプの中身の圧力分布を想像してみると分かります。ポンプの吸込側と吐出し側の隙間が狭ければ狭いほどNPSH-rは小さくなります。

どんなポンプでも吸込側と吐出し側は繋がっています。吸込側から吐出し側に液体を送っているのですから、繋がっているのは当たり前なのですが・・・。機械設計者の皆様、教わらなかったことは常識だそうです。

この繋がっている隙間が大きいほど、吐出し側(高圧)から吸込側(低圧)へ移送する液体が漏れてしまうので、ポンプの吸込み性能が落ちます。この隙間がNPSH-rに絡む要素の一つなのです。

言い換えますと、隙間が狭いほど吐出し側(高圧)から吸込側(低圧)への液体の漏れ量が減りますので、より吸込側を真空へ近い状態にすることができる、つまりNPSH-rを小さくできるということです。

隙間について、遠心ポンプは大体 0.1 mm のオーダーでの隙間、容積式ポンプは大体 0.01 mm のオーダーでの隙間になっていると言われています。

遠心ポンプを見てみますと吸込側と吐出し側、結構な隙間が空いています。

一方で、ピストンポンプやねじポンプなどの容積式ポンプは隙間が狭くなっています。

このことから、容積式ポンプの方がより低いNPSH-rとすることができるのですね!

隙間が狭い分、部品加工や組立に手間がかかるので、お値段は上がりますご注意を。

軸封にも左右されます  NPSH-rはメーカーに必ず確認を

NPSH-rを決めるのはポンプの方式だけではありません。軸封にも注意が必要です。

軸封(じくふう)とは

ポンプはケーシングからシャフト(主軸)を突き出させ、それを電動機で回転させて液体移送を行う機構が多く採用されています。そこで問題となるのが、突き出した主軸部からの液体のモレです。これを止めるための装置軸封装置といいます。

グランドパッキン、オイルシール、メカニカルシールなどがあります。

ポンプの構造によっては、軸封部が吸込み側の圧力と同じになる場合があります。そのようなポンプで吸込み性能が良い場合、軸封部から空気を吸ってしまう可能性があるのです。

ストローに穴が空いている状態ですね。

ポンプの形だけではなく軸封が変わるとNPSH-rも変化するので必ずメーカーに確認をお願いします。

まとめ

NPSH-rはポンプの吸込み性能を表します。

NPSH-rの値は実験で求めます。また、NPSH-rの大小は隙間次第です。

NPSH-rはポンプ構造により変化します。メーカーに必ず確認お願いします!

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