トルクと動力02 トルク(モーメント)と動力(馬力)の単位を解説 謎係数の根拠もあります

トルクと動力

トルクと動力の関係性について、難しいと感じています。初学者の方にとっては必ずぶち当たる壁のようなものだと思います。

車に詳しい人であればよくわかると思うのですが、自分設計の癖に車はあまり得意ではないので、理解するのがとても大変でした。

トルクと動力の説明について、前回は私なりに簡単に、かつしつこく例を出して表現してみました。

ぜひ前回の記事を確認してもらってからこのページを参照してください!

こんな人におススメ
  • トルクの計算式にでてくる謎の係数9549又は974の正体が知りたい方
  • トルクから動力を求める換算式について違和感がある方
  • 回転速度とラジアンの関係性が良くわからない方

小難しい話 単位について解説

今回は単位に関する小難しい話になります。しかし、単位さえ理解してしまえば計算に迷うことはありません。単位を制する者は設計を制します。ちょっとお付き合いください。

SI単位で表記を統一することはしません。分かりやすい単位で表記していきます。SI 単位に関してはこちらで解説していますので、よろしければ。。。。

トルク(モーメント)は「力」×「半径」 N m 

トルク(モーメント)は「力の大きさ」と、「回転中心からの距離=半径」の掛け算です。これは分かりやすいと思いますので、詳細説明は省きますね。

「力」や「半径」の単位は複数ありますので、トルクは色々な単位で表すことができますが、一般的なところを狙って、N m とすることとします。そのほかは[kgf m]とか[N mm]などもあり得ますね。

回転速度は「回」/「分」 min-1

回転速度はある決まった時間に何回転したかを示しています。大体、一分間に○○回転という表現が多く使われています。エンジンの回転数を示すrpmも一分間に何回転しているかを示しますね。

回転速度の単位としては、ここではmin-1を使用します。

動力は 「仕事」/「秒」= 「仕事率」  J / s = W

動力は「回す力の持続力」でした。

実は回す力ではなく、押す力と考えた場合、これに対応する物理量があります。

仕事は力×距離で表します

押す力の持続力、それは「押す力」「移動した距離」で表される「仕事」という量です。

有名な単位はJ(ジュール)ですね。理系の方にとっては馴染みの深い(分かりにくい)言葉なのではないでしょうか。

1ニュートンの力で1メートル押した仕事を1ジュールと定義します。

$$1 [N] × 1 [m] = 1 [J]$$

一秒間あたりの仕事がワット(仕事率)です

さらに、1ジュールの仕事を行うのにかかる時間を考えます。

1ジュールの仕事を1秒間に行った場合、つまり、1ニュートンの力で1メートル押すのに1秒かかった場合、それを1ワットという単位で表します。

1ワットのことを仕事率と言います。

$$1 [J] ÷ 1 [s] = 1 [W]$$

ワットは一般的に結構使われることが多いので、馴染みのある単位ではないでしょうか?ワットは電気の関係で良く出てくる式だと思いますが、このように動力を求める式にも出てきます。

この電気のワットと動力のワットは等価であるとして、色々な計算が可能です!例えばボルトやアンペアから計算されるワットを使って、トルクや回転速度を求めることもできます。

回す力を押す力に変えるには? ラジアン(rad)を使います

求めるのは動力ですので、回す力ではなく、押す力に変換しないといけません。

ここでラジアン(rad)を導入します。ウィキペディアのラジアンの解説を載せます。

ラジアン: radian, 記号: rad)は、国際単位系 (SI) における角度(平面角)の単位である。円周上でその半径と同じ長さのを切り取る2本の半径が成す角の値と定義される。

wikipediaより引用

上記わかりにくいと思いますが、「扇形の半径を1とした時の弧の長さの比率」と覚えておくと良いと思います。以下、サイコーに寒かったツイートを載せておきます。

扇形の半径と孤の比率は扇形の中心角度によって決まりますので、この比率は角度のことを指しています。角度を違う単位で表した、と考えて大丈夫です。

扇形の半径と角度がわかれば弧の長さがわかりますよね。扇形の半径に角度であるラジアンをかけると弧の長さになるというわけです。

特殊な形の扇形として、半円を想像してください。この時の弧の長さは直径2Rの円の周の長さの半分ですから小学生で習った公式を応用して$2πR ÷ 2 = πR$となります。πは「パイ」と読み、円周率3.14のことでしたね。

上記の結果から、半円の場合は半径Rにπラジアン(rad)をかけると円弧の長さをπRという風に求められることがわかります。

πは円周率3.14と習ったと思いますが、πの単位はラジアンなのです。

このラジアン(rad)を使ってトルクの計算式に出てくる「半径」を「孤の長さ」へ変換する「力」×「半径」から「力」×「移動距離」となるので動力が求められます。

トルクと回転速度からラジアン(rad)をうまく使って動力を計算してみましょう!

それでは回転半径R[ m ]とかかる力F[ N ]からトルクT[ N m ]を求め、さらに回転数N [ min-1 ]を乗じることにより、動力P [ W = J / s = N m / s ]を算出してみましょう。

動力はトルクと回転速度を掛け算することで求めることができます。

$$P[W]=T [N m] × N [ min^{-1} ] = F [ N ] × R [ m ] × N [ min{-1}]$$

求めるのは動力$P [ W = J / s = N m / s ]$ですので、単位を合わせていきます。この時ポイントは2つです。

ポイント1:1分あたり○○回転を1秒あたりに変換

求める単位が$[ N m / s ]$ですので、回転速度の単位である$min^{-1}$(分)を$s$(秒)に直します。具体的には$N$を60で割ります。

$$N [min^{-1}] = \dfrac{N}{60} [s^{-1}]$$

ポイント2:○○回転をラジアン表記に直す

「回す力」を「押す力」に変えるために回転半径にラジアンを乗じます。これにより「力」×「回転半径」から「力」×「距離」に変換され、これを「仕事」として計算できるようになります。

1回転、つまり360度は2π[ rad ]ですので、$N$に$2π$をかければオッケー。

最終的に回転速度は

$$N [min^{-1}] = \dfrac{N}{60} [s^{-1}] = \dfrac{2πN}{60} [ rad / s ]$$

となります。これは回転速度を角速度に変換しているのと同じです。

ポイントを抑えて動力を計算するとこうなります

上のポイントをまとめて動力を求める式にまとめると以下のようになります。

$P [W]$

$= T [N m] × N [ min^{-1} ]$

$= F [ N ] × R [ m ] × N [ min^{-1} ] $

$= F [ N ] × R [ m ] × \dfrac{2πN}{60} [ rad / s ]$

実際に計算するときはそれぞれの単位に気をつけてください。

単位に気をつけた方がいいという話はこちらにありますのでご参考に。。。

よく見る謎の係数の正体は$\dfrac{60}{2π}$です

今までは動力Pを求める式について見てきました。

ここで、動力、回転速度がわかっている場合のトルクを求める式について見てみましょう。みてみると謎の係数の正体が分かります。

先ほど求めた動力を求める式をトルクを求める式へ変換します。

$T[N m]= P [W(Nm/s)] × \dfrac{60}{2πN} [ s / rad ] = \dfrac{60}{2π}×\dfrac{P}{N}[N m]$

上記の単位のうち、メートルはラジアンで割られていますので、実際は「孤の長さ」から「半径」に変換されていますね。

ここで、動力の単位をワットからキロワットで表す方法に変えます。計算はワットで行わないといけませんので、下記のように置き換えてみましょう。

$$P[W]=1000×P'[kW]$$

上記を使って書き換えると

$$T[Nm]=P[W(Nm/s)]×\dfrac{60}{2πN}[s/rad]=\dfrac{60×1000}{2π}×\dfrac{P’}{N}[N m]$$

ここで、係数に注目してみますと

$$\dfrac{60×1000}{2π}≒9549$$

これが謎係数の正体です。ちなみに974はニュートンではなく、キログラム重で表した時に出てくる数字です。重力加速度で割ると出てきますよ!

$$\dfrac{60×1000}{2π}×\dfrac{P’}{N}[N m]=\dfrac{60×1000}{2π×9.8}×\dfrac{P’}{N}[kgf m]≒974\dfrac{P’}{N}[kgf m]$$

まとめ

動力を求めるには回転速度を角速度に変換して計算します!

その時変な係数が出てきますので、注意!

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