私の尊敬する設計者に小堀さんという方がおられます。昔の方はご存知かもしれませんが、このかたは2000年代には珍しく、設計に関するマニアックな情報を発信されている方でした。もうその方のウェブサイトは存在しません。おそらくその方は癌で亡くなってしまってウェブサイトも閉鎖されてしまったのだと思います。インターネットアーカイブからその方の記事内容を引用させていただき、要点をまとめてから、自分なりの分析を加えていくシリーズを、題名をそのままお借りしてピカピカの一年生というシリーズで記事にしていきたいと思いました。この記事は設計初心者向けに書かれたものとは思えないほど、設計者にズドンとくる内容です。今回は数字の足し算についてです。
引用部分は太字緑色と””で示していきます。
設計者の数字の足し算の基本
問題です
みなさん、下の数字の足し算をやる時、どうしますか?
3 5 2 1 4
…
…
…
…
もちろん答えは15です。
小堀さんはこの様におっしゃっています。
こんなこと やってくるのが居ます—-(得意に満面の笑顔ですが)
1+2+3+4+5=5X6/2=15 ----とか
(3+2)+(5)+(1+4)=3X5=15 ----とかです
はぁ そうですかってな物です 間違っているとは 言いませんが
基本的には だめです
頭のピントが おかしいのです どっかで 線が切れているのです
ボロクソな言い方ですね…
正解は・・・
正解は以下の通りです。
3+5+2+1+4=15 が 正解です—
詳しく書くと
3+5=8 8+2=10 10+1=11 11+4=15 です
当たり前ですが、当たり前のことができていないのが人間です。ここで、はっと気づく人は相当な感覚の持ち主だと思います。理由を見ていきましょう。
理由
小堀設計さんは数字の足し算は順番が大事であると主張されています。式を整理したり、まとめて掛け算にしたりするのは特殊な例とのこと。
他人から見てわかりやすい
例えば、この足し算が桁数が6桁に増えて、個数が1000個くらいあったとします。これを同じものがいくつあるからこの項をまとめて・・・などと下手に整理して計算を始めてしまうと、あなたが病気など絶対避けられない理由でその仕事ができなくなったら、他人にうまく引き継ぐことが難しくなります。あなたの工夫したやり方の情報も含めて伝達する必要がありますからね。左から順番に足し算を実行していれば、ここまでの合計は○○なので、続きをお願いできますでしょうか?とできます。
確実である
また、この方法であれば
徹夜でフラフラでも順番にやれば間違いが少ない
ともおっしゃっています。人間、いつもベストな状態で仕事や作業ができれば良いのですが、調子が乗らない日もあります。仕事として数の足し算を行うときは確実な方法でやっていきたいですね。
設計者の数字の足し算のコツ
手伝ってもらえるように 分けることができるように 左端より 順番にやる
小堀さんはこれで締め括っています。「左」というのも重要なポイントで、ノギス、マイクロメーター、JISハンドブック全て左からであり、この業界では世の中が右利き用にできているからだということです。
所感と気づき
「足し算」が何に該当するのかはよく考える必要がある
これはあくまで設計の数字の足し算の話です。小堀さんはちょっとした工夫を否定しているわけではありません。物事には順番があり、それを順番に処理していくことの大切さを主張されていると思います。工夫についてもよく理解をして使用すべきとおっしゃっていました。
どんな時にこの数字の足し算の考え方をすべきなのか?
- 段取り
- 手順
- 複雑なもの
パッと思いつくのはこれくらいですが、設計の仕事って順番が大事な場面ってありますよね。それに気をつけるべきって言うのを感じました。
「他人から見てわかりやすい」「確実」というのが具体的にどんなことなのかが理解できる
他人が見ても分かりやすい様に書け!とか、ミスなく確実に!という事に対する具体的な方法がまさにこの「左から順番に足していく」ことではないでしょうか?よくこれらの注意を受けたり、後輩を指導する時に安易にこれらの言葉を使いがちですが、具体的には回り道せず順番にやる、というのが基本になっているという事ですね。
しかし世の中に求められているのは確実さよりスピード PDCAよりDDDD
これは機械設計業界関係者であればほぼ100%反対される主張だと思いますが、今の世の中は確実さよりスピードが重要視されます。
機械設計者に関係する製品は人の命に関わることが多いです。そのようなものに対してスピードを重視して失敗しては絶対にダメです。またスピードを重視した設計は出戻りの発生率が増え、結果的に時間もコストもかかってしまいます。
しかし、めまぐるしく変化する世の中において、スピードがなければすぐにでも置いていかれる状況です。PDCAではダメ、DDDDだ!というインフルエンサーさんも増えました。
私は、機械設計者も確実性を求めるだけではダメになってきたと思います。確実性とともにスピードも追求しなければ生き残っていけません。スピードを追求するためにどうしていけば良いか。現代の設計者は必死に考えていかないといけないと感じています。
これはあくまで数字の足し算
ここに出てくるのは「数字の」足し算です。このあと、「物の」引き算というのもあります。数字と物の違いを理解することも重要です。次の記事を参照してください。
まとめ
数字のたし算は
”手伝ってもらえるように 分けることができるように 左端より 順番にやる”
これは足し算以外でも応用効きますよ!
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