設計者がよく使うS45CとSS400という鋼材について、成分や引張強さ等を設計者の目線で押さえておきたいポイントをまとめてみました。
そもそも…
S45Cってなに?
JIS G 4051に規定される材料です。成分が決まっています。引張強さは諸条件で変わります。
SS400ってなに?
JIS G 3101に規定される材料です。引張強さが決まっています。成分はまちまちです。
どんな形状?
SS400は板材、S45Cは丸棒材が一般的
私の会社ではSS400は板材、S45Cは丸棒材というのが一般的です。
これは皆さまの会社で使う材料によって変わってくると思います。付き合っている協力会社の材料屋さんの在庫次第です。
場合によってはSS400の丸棒、S45Cの板材はあると思います。
自分の会社の上司や重鎮の設計者に訪ねて資料をもらいましょう。そんなの知るか!なんて言われる人もいるかもしれませんが、そうしたら製造部門へ問い合わせるか、材料屋さんに電話をかけて聞いてみましょう。材料屋さんは注文先(お客さん)からの問い合わせなので回答してくれるはずです。
これを知らないと・・・
例えばシャフトを設計するのに図面にSS400と書いてしまうと、場合によっては板材から丸く削り出して製作されて、コストがめちゃくちゃ上がる可能性があります。
その場合は製造する人が勝手にS45Cで製作してものが出来上がる場合が多いと思います。そこの製造者の人は「シャフトは丸棒なんだからS45Cで作るのが当たり前」と思っているので、この程度の間違いは図面を描いた設計者にフィードバックされることはほとんどありません。
こうして、SS400とS45Cの違いの判らない設計者が増えます。
設計者の皆様、教わらなかったことは常識だそうです。
S45Cの引張強さが知りたいんだけど…
S45Cの引張強さは決まっていませんが、下の方法で確認することができます。
ミルシート(熱処理記録)を確認する
S45Cのミルシートに引張強さが書かれている場合がありますが、JIS規格上では成分しか規定されていないので引張強さが書いていないことがほとんどです。S45Cは熱処理方法によって引張強さが変化しますので、既存の製作品の熱処理記録を確認してみましょう。
硬さ試験を行って引張強さを推測する
硬さから引張強さを推測することができます。検査課や品質保証課の部門があれば、部品を持って行って硬さ試験を行ってもらいましょう。鉄球の跳ね返りを見るショア硬さが傷のつきにくい方法なのでおすすめします。検査方法や硬さから引張強さへの換算方法はその部門の人が詳しいと思うので聞いてみてください。
引張強さを実際に測定する
引張試験機のある会社さんなら実際に計測してみましょう。なければ自治体が運営している近隣の産業技術センターにて引張試験機を比較的低価格で借りることができます。電話での技術相談もしていただけるので、相談してみてもいいかもしれません。引張試験片の作成はJIS Z 2241に詳しく書いてありますので、試験片を作る際は参考にしてみてください。
それじゃない!一般的な引張強さを知りたいんですけど!
本当は上記のような方法での確認が望ましいのですが、設計者としは強度計算に使えそうな数字を知りたいものですよね。これはJIS ハンドブック 鉄鋼1の付録に数値が乗っています。
ですが、表紙の注意事項を読めばわかりますが、形状により強度が異なるそうです。
この辺の知識をちゃんと整理しておかないと、鉄鋼メーカーが信頼を落としている昨今では、客先との大きなトラブルになりかねません。また、強度をシビアに見なければならない業界もこの数値の単純利用はやめた方がよさそうです。
SS400の成分が知りたい…
これは難しいです。SS400はもともと決まりがありません。ウェブサイトで調べる限り、C(炭素)の量が0.15~0.2%というものを見たことがありますが、実際に調べるとすると、専門機関でのPMI検査が必要になってくるでしょう。
考えられる場面としては、「本来S○○Cを指定して製作依頼しているのにSS400が使われている可能性があることを調査する」時でしょうか。
この場合は比較による方法がいいと思います。
- 製作依頼したメーカーのSS400と製作物との成分比較を専門機関へ出す
- 前述した硬さ測定法により硬さを比較する
- グラインダなどで削って火花を比較する。
まとめ
SS400は引張強さ、S45Cは成分しか決まってない。
記念の初投稿でした。。。
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