材料の各温度における引張強さと降伏点の求め方(目安)

機械設計
サトー
サトー

知っている人は常識ですが、忘備録や新材料採用における考え方として、いいなと思ったので記事にしようと思います!

材質を変えた時や、いつもより高温の環境で使用する場合の材料強度心配じゃないですか??

普通でしたら、その温度の環境を用意して引っ張り試験などで評価すれば良いですが、お金も時間も制限があります。

なので、ざっくり知りたいなぁーと思うのですが、材料規格には温度ごとの引張強度なんてのっていません。

でもある程度権威あるデータを用いないとマズイ・・・。

そんな時にはJIS B 8265 を活用しましょう。ここではJIS B 8265を使用した材料における各温度ごとの引張強さと耐力を求める方法を紹介します。

別記事でJIS B 8265についてはちょっと触れました!

機械の設計温度の決め方も紹介していますので、参考にしてみてください!

こんな人にオススメ
  • 引張試験をする予定だけど、引張強さや降伏点をサクッと見積もりたい。
  • 引張強さについて、サクッと知りたいけどある程度権威性も持たせたい。
  • そんなの分かるの? 単に興味がある。

注意!かなり安全側のざっくり数値になります

後述しますが、あくまでざっくりですので、設計上の目安としてください。実際の設計に使用する場合は実際に試験をした方がいいでしょう!

JIS B 8265とは圧力容器の規格です

JIS B 8265とはどんな規格なのでしょうか?

この規格は,設計圧力30 MPa未満の圧力容器の構造について規定する.ここで,圧力容器とは圧力を保持する容器,圧力を発生する流体を内蔵する容器,又は外圧を保持する容器をいう.

JIS B 8265 : 2017 より引用

要は圧力のかかる部分の構造について決めている規格です。

実際に規格を見たい場合は↓からおねがいします!ココでもいいです。

日本産業標準調査会:データベース検索-JIS検索

圧力容器の構造は基本的にこれに沿って設計しておけば問題なし!ってやつですね。

ですが、体感的にはかなり余裕を持った設計です。これに沿って設計するととんでもなく「ずんぐり」なものができあがります。

なぜでしょうか?

引張強さが載ってるけど値が低い?安全率が入ってます!

その理由は基本的には引張強さに安全率4が加味されているからです。

さらに、複雑な形状についてはさらに安全率が付加されるような形態になっています。

ですので、これに沿って設計するととても「ずんぐり」な設計になります。

逆に言えばこれに従っていれば圧力で壊れることはないので安全です!

安全率が加味された材料ごとの引張強さが表になっています

引張強さに安全率が4かかっている、ということを言いましたが、この規格には温度ごとの許容引張強さが決められ、それが表になっています。

ポイントは「温度ごとに」というところです

安全率はかかっていますが、材料のJISにはほとんど載っていない温度ごとの許容応力がわかるんです。

逆を言えば、安全率を加味しなければ、その温度での許容応力がわかってしまうのです!

この表を利用して温度ごとの許容応力を求めてみましょう

この表から、最小引張強さを逆算して求め、実際の引張強さと比べてみましょう!

実はJIS B 8265の解説添付書にはこの表の許容応力の決め方が書かれています。

この規格に書いてある許容引張応力は下記のどちらかの小さい方としているそうです。
・常温(設計温度)における許容引張応力は最小引張強さの1/4
・常温(設計温度)における許容引張応力は最小降伏点又は0.2%耐力の1/1.5

サトー
サトー

溶接品や鋳鋼、鋳鉄などは許容応力の決め方が違います!

規格本体の解説添付書を参照してくださいね!

たぶんこの書類は規格本体を購入しないと見れませんが・・・

上記の決まり事の上でこの表はできていますので、これを参考に実際に最小引張強さを計算してみます。

例えばSS400の40℃以下の許容応力は$100N/mm^{2}$と表にあります。

これを4倍すれば最小引張強さになりますので、

$$100 N/mm^{2} \times 4 = 400 N/mm^{2}$$

となります。これは材料規格上の引張強さと一致していますね!

一方、この記述からは降伏点も求めることができそうです。

計算式は

$$100 N/mm^{2} \times 1.5 = 150 N/mm^{2}$$

となります。

規格上のSS400の引っ張り強さは$400N/mm^{2}$、降伏点は$245N/mm^{2}$ (板厚 16 mm 以下)です。

サトー
サトー

引張強さは規格値通りでしたが、降伏点にはだいぶ開きがありますねぇ・・・

JIS B 8265の許容応力の決め方は、引張強さと降伏点のどちらか小さい方ですので、SS400の場合は最小引張強さを基準にしているのですね!

数値が違いすぎるので降伏点は求めても無意味??そんなことないです!

先ほどSS400の降伏点を求めましたが値に開きがあるのであまり使えそうにない・・・

しかし!

このJIS B 8265の許容引張応力は最小引張強さと降伏点のどちらか小さい方を基準にしています。

よって、計算された降伏点は実際の降伏点より低くなりますのでこれを元に強度計算しておけばありません。

その他わかること

もう少し表を細かく読み込んでいくといろんなことがわかります。注意点も交えながらざっと説明します!

特定の温度の引張強さがわかります

SS400は350℃まで許容引張応力は$100N/mm^{2}$と常温(40℃以下)とかわりません。

しかし、比較的高温での使用が許容されているSUS304では800℃までの許容引張応力が記載されています。

ちなみに800℃での許容引張応力は$11N/mm^{2}$と書かれていますので、最小引張強さは$44N/mm^{2}$と計算できます。

サトー
サトー

さすがに高温域だと引張強さは低いですね!

でも注釈に色々と書かれていて、制限があるようです。

注釈が意外と厄介ですので、もしこの辺の値を使用するようでした、注釈はバッチリ押さえた方が良さそうです。

使用温度限界の目安がわかります

例えばSS400の部分を確認すると、温度が375℃の場所には数字ではなく「ー」が書かれています。

これは375℃での耐圧容器としての使用は厳しい、と想像できます。

350℃以上ではSS400は使用しない方が良さそうです。

この点については機械の設計温度の決め方でも紹介していますので、参考にしてみてください!

まとめ

JIS B 8265を利用すれば、特定温度における引張強さを予測できます!

ただ、注釈とはちゃんとみましょう!

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