キーの締結について色々疑問がある(検証方法など)

機械設計

機械を設計する時、回転するものの締結に対して使うことのあるキー。このキーについて、わからない部分が結構あります。キーの加工についての検証方法に触れながら、不明な点と自分の考えを並べてみました。設計するときに参考になれば幸いデス。

キー部を組立すると、手修正が結構必要…

完成したシャフトのキー溝へキーを取り付け、ボスへ入れようとする時、組立の人は結構手修正をかけているのです。

話を聞くと、「ああ、これ大体はいらないよー」って言われました。ええっ!!ってなりますよね、そりゃ。品質警察が出動します。

でもよくよく調べてみて、考えてみると当たり前でした。今では、よくこんなものがJISで決まっているよなぁ、と思うまでになりました。

キー溝を加工する方法

ここでは加工する方法をまず述べます。自分の知識が浅いのが申し訳ありませんが、以下のような形が多いと考えています。

穴側:キーシーター レーザーカット

穴側へキー溝を加工する方法は私は2つしか知りません。

余談ですが、キー溝を加工することをキー溝を「切る」っていいますよね。

一つはキーシーターと呼ばれる機械にセットしてキー溝を切る方法、もう一つはレーザーカットです。

キーシーターはスロッターとか、色々呼び名があるようです。ここではキーシーターと呼ぶことにします。刃物を上下移動させて溝を入れていく機械です。

当然、被切削物をセットする時に切り粉が挟まっていたり、元々穴の加工がずれていたるする可能性もあるので、万能とは言えませんが、キーシーターはほぼ確実に正確なキー溝を加工してくれるはずです。また、レーザーカットも余程段取りを適当にしない限りは正確に溝加工を行えるはずです。

軸側:エンドミル

一方、軸側へキー溝を加工する方法は私は1つしか知りません。

エンドミルによる加工です。

複合加工機であれば、軸の加工と共にセンタ穴基準でキー溝を加工できます。しかし、ほとんどの場合、シャフトをフライス盤にセットして加工するのではないでしょうか?

キー溝が曲がってないか検証できなくない?(穴側)

いくら精度の良いスロッターを使っても、いくら正確な段取りをしたレーザーカットを使用しても、人間がやれば間違える可能性があります。それをチェックする必要があると思いますが、チェックどうやりますか?

市販品の測定器具の中には、キー溝の幅を測定するための「go not go ゲージ」と言うものがありますが、それでは意味がないのです。必要になるのはキー溝が加工してある穴の中心線に対するキー溝の幾何公差(ここでは対称度ですかね)を満たしているかどうかのチェックです。

これ、三次元測定器でも結構難しいと思います。

キー溝は大体細長い穴に沿って掘られているので、長めのスタイラスが必要になります。

また、キー溝の幅の部分の表面積は基本的に狭いため、スタイラスの先端径はかなり小径でないと対称度を測定できません。

キー溝が曲がってないか検証できなくない?(軸側)

一方、軸側は多少検証できます

文章では説明がしにくいのですが、図面を載せる手段がないため文書で説明します。

  1. まず定盤の上にキー溝加工されているシャフトをvブロックを使用してセットします。
  2. 次にキー溝へハマるような平行が担保されている板を差し込みます。キー溝へしっくりな寸法の板を用意してください。
  3. その板が水平になるような位置にきたら、シャフトが回らないように「挟みもの」をするなどして固定します。
  4. 板の上にダイヤルゲージを走らせて、平面を出します。その時のダイヤルゲージの高さを変えないようにしてください。
  5. その後、シャフトを180度回転させて固定します。最初水平を出した板とは反対の面が今度は上側に向きますので、ダイヤルゲージの高さは変えずにその面で水平を出します。
  6. 2度目の水平を出したところでズレがあった場合、そのズレの半分がいわゆる対称度の度合いとなります。

この測定方法、騒動面倒くさいです。まずダイヤルゲージによる平面出しを2度行う必要があります。次に平行のでている板が必ずしもキー溝にしっくり入るとは限りませんので、何種類かのわずかな厚さの違いしかなで板を在庫しておく必要があります。板の平行度の担保も必要です。

これをやるくらいなら三次元測定器の方が良いのではと思いましたが、穴側と同様、スタイラスの限界もあり、三次元測定には向きません

非接触タイプの測定器が良い

近年画像処理による三次元測定器が低価格化、大型化してきています。その辺りを使うとだいぶ簡単に測定できると思います。

設計としては公差をどう指示すべきか

ほぼ測定不可能なキー溝に対して機械設計者としてはどう指示をすれば良いのでしょうか

わからない

私たちの会社の図面ではキー溝に対する幾何公差は触れていませんでした。結構不良も多発しており、「おい、サトー、キー溝に幾何公差をどう入れるか検討しろ!」と言う仕事がありました。

散々考えましたが、幾何公差を入れても測れないので入れても無駄、と言う結論を伝えました。今であれば、非接触三次元測定器も増えてきましたので、可能かもしれません。

強いて言うのならこのウェブサイトが参考になります

非常に参考になる資料は 株式会社 富浜精工 さんの下記の資料です。

http://www.keyman01.co.jp/te2009.12.pdf

現状の作業に関する問題点も含めてざっくばらんにまとめられています。私もこの方法に従おうと考えています。

キーそのものの機能について

シャフトやボス穴基準で平行度がでていることは重要ではない?

キーは回転する力を伝達する役割であることがほとんどです。スムーズな回転にはキーとキー溝がシャフトに対してまっすぐであればあるほど良いはずです。ずれていれば、片当たりしてしまうので部分的に異常摩耗や変形の可能性があります。

よく考えると、これらの機能が必要なのにキーの締結機構にした時点で隙間があってガタガタなんですよね

ただでさえガタガタなのだから、少なくとも平行にはなって欲しいと考えるか、どうせガタガタなのだからあんまり気にしなくて良いと考えるか…

キーでの締結は、よくよく考えてみると、かなりラフな設計です。本当に精度が必要なら焼き嵌めなどの摩擦締結方法にした方が良いと思います。

ずっと昔からあると言うことは便利だから?

キーの締結というのは昔からずっと使われてきています。JISにもキーの規格が制定されていますが、旧規格のものはちょっと寸法が違うようで、現在でも時々混乱を招いています。

昔から使われているからこそ、汎用性が高く、設計にも適用しやすいのでしょう。

確かに寸法も規格である程度決まっているので便利です。しかし、合理的とは思いません。キーは規格にもなっており、万全かと思いきや思わぬ落とし穴があることを認識しておいた方が良いですね。昔からあるだけなのです。

海外ではキーのサイズが合わない

海外には日本で言うJISと同じようにASMEやAGMAなどの規格があります。キーも別途規格があり、日本のキーの規格とは全く違うものもあります。

寸法が違うのは当然のこととして、海外の規格は考え方もすこし違うようです。

寸法の決め方が違うようで、なるほどなーと思いました。これはまた別の機会があればご紹介したいと思います

この辺の知識は回転機を使う設計者であれば必須となってきますよね

キーの強度計算の謎

キーの強度計算について勉強しようとすると、参考書ごとに述べていることが違います。例えば両端の丸いキーはトルクを受ける表面積としてはどのように考えるべきか、とか、シャフトキー部のせん断応力を求めるときにつかう断面積はどのように考えるべきか、とかです。

いろいろな計算方法がありますが、どれが正しいのか、よくわかりません。

シャフトへの振動の有無や被駆動側の負荷状態により変わるので、各自で最適なものを考えろ!と言うと聞こえは良いのですが、それだけ色々考えなければいけない割には安易にキー締結をしていると言うところも問題だと思います。

まとめ

キーは全然万能ではない!

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